とりまとめ途中記事より15 ベル不等式を破る隠れた変数を発見 |
by Ichiro Nakayama フォロー中のブログ
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2022年 05月 09日
ベル不等式を破る隠れた変数の発見 1 要約 1964年にベルが発見した不等式は、ベルの不等式と呼ばれる。ある相関の関係にある物理量は、局所実在論の範囲では「隠れた変数X」を仮定しても、必ずこのベルの不等式を満たさなければならない。ところが、量子力学では、ベルの不等式が破れることが予見された。アスペらは1975年から1982年にかけて一連の実験を行い、ベルの不等式が破れていることを確認した。これにより、局所実在論に基づかなくても量子力学は成立することとなった。そして、その不可思議さは不可思議さのまま物理学に受け入れられたのである。しかし、今回エネルギー体理論の光子模型を使って発見した「隠れた変数X」を使えば、局所実在論の範囲でCHSH型ベルの不等式を破り、量子力学と同じ結果が得られる。つまり、CHSH型ベル不等式が破れる原因が局所実在論により示されたと言える。これは、ボーアらが主導したコペンハーゲン解釈とアインシュタインらとの間で行われたEPR議論の後に、ベル不等式やアスペの実験により否定されたアインシュタインらの「神はサイコロを振らない。」と言う主張がよみがえることを意味する。 2 ベル不等式 系の波動関数が物理量の固有状態の重ね合わせ状態にある場合、その物理量を観測したときの結果は確率的にしか予測できない。アインシュタインは、この量子力学の確率的な性格を受け入れず「神はサイコロを振らない。」と言った。「観測するまで結果がどうなるか決まっていない。」と言うのが、量子力学のコペンハーゲン解釈である。 1964年ベルは、適当な物理量の組のある相関Cについて、局所実在論の範囲では、ある相関を調べたときに満たすべき不等式があることを見つけた。その式が、-2≤C≤2 である。逆に、量子論では破れる場合がある。局所実在論とは、ある事象が光より早く異なる点に伝わることはない(局所性)、また全ての物理量は観測によらず常に定まった値を取っている(実在性とするものである。もう少し具体的に言うと、次のとおりとなる。 3 アスペの実験 1975年から1982年にかけて、パリのオルセーにあるアライン・アスペ(Alain Aspect)と彼のチームは、カルシウム カスケード ソースを使用してCHSH 不等式を確認する実験を行った。カルシウム原子にある周波数のレーザー光を照射して、ある特定の励起状態にすると、2つの光子を反対方向に放出する。その内部状態は、次式で表されるエンタングル状態(量子絡み合い状態)とみなすことができる。これは、2つの光子とも、x偏光とy偏光の状態の重ね合わせ状態を表す。 図1は、1981の実験装置の概略図である。光源Sは、反対方向に飛び出す光子のペアを生成する。それぞれの光子は、光子の偏光により、検光子AとB(偏光ビームスプリッタ)で、それぞれ透過または反射し、Aでは、aまたはa’、Bではbまたはb’の2つの方向に振り分けられる。その結果、aまたはa’、bまたはb’の2つの検出器のどちらかで検出される。検出した場合は+1、検出しない場合は-1とする。先着判定回路CMにより、AとBの同時検出が記録され、N(+1,+1),N(-1,-1),N(+1,-1),N(-1,+1)に分類されて、累積が記録される。 参考までに、1982年に行われた実験装置の概略を図3に掲げておく。Aに向かった光子とBに向かった光子との相関の検証を確実にするため、切換スイッチが加えられており、実験の結果は、明確にベルの不等式が破られていることを示すものであった。 この切換スイッチは、光子が、2光子発生器Sから検光子に到着する間に、光子をどの方向に振り分けるかをランダムに選択できる。そして、A(or B)に向かった光子が、aまたはa’ (or bまたはb’)のどちらに振り分けられたかと言う情報をB(or A)の検光子が受け取ることが出来ないようにした。2光子発生器Sと検光子の距離は6mである。光子は、この距離を20ナノ秒で移動するので、切換スイッチは、それより早く10ナノ秒で切り替える。 4 エネルギー体理論 エネルギー体理論による双子の光子のエンタングルメントの説明の前に、光子の進行方向と検出装置等の位置関係を図4により確認しておきたい。エネルギー体理論の光子模型は、裾野が広がる形状をしていて、光子の進行方向と観測方向が非常に重要だからである。光子は、光源と観測者に対して直角方向に運動している。また、光子の広がる裾野は、偏光の原因となる。 ところで、エンタングルした双子の光子(量子もつれ光子対)をどのように作るか触れておきたい。「量子もつれ光子対」を発生させる方法は大きく分けて2通りある。 1. 二次の光学非線形性を有する結晶中でのパラメトリック下方変換 2. カルシュウム、水銀などの2価の原子の電子遷移 1.については、光子の裾野を両端から観測できるようにしたものと考えられる。 2.については、陽子軌道によるスピン模型で、量子もつれ光子対の発生と呼ばれる状況が生まれることを図5により説明している。2つの電子は、陽子をはさんで丁度対面となる位置で遷移する。そうすると、相対する2つの電子の左廻りに回転する波動は、互いに逆方向で向き合うこととなる。そのため、電子の姿を写した2つの光子の回転する波動も、互いに逆方向の回転で向き合うこととなる。 さて、光子は回転しながら薄く広がった波動であるから、当然偏光の性質を持つ。2価の原子では、電子は陽子の軌道上で相向かい(図5で左側と右側)の姿勢を取っている。電子遷移のエネルギーは、陽子の同じ軌道上にあるため同じとみなせる。また、遷移方向は互いに真逆であるが、偏光(電子の広がり面)は、同じ角度となるため、エンタングルした状態と言える。図6は、縦偏光の光子が、縦偏光ビームスプリッタと横偏向ビームスプリッタに入射したときの反応を示している。縦偏光ビームスプリッタでは、左右方向に運動する光子のどちらも透過し、横偏向ビームスプリッタでは、左右方向に運動する光子のどちらも透過しないことが分る。なお、透過する場合は、光子全体ではなく、光子の裾野の一部が透過するものである。量子力学では、1個の光子全体が透過するかしないかのどちらかであるとしている点と異なる考え方である。 図7は、斜め偏光ビームスプリッタを透過する光子を立体的に把握できるように平面、正面、側面から描いている。縦偏光光子が、斜め偏光ビームスプリッタを、左から右方向に横切って通過する間に、光子の裾野の一部が、斜め偏光ビームスプリッタのスリットを通り抜ける。そのため、透過した縦偏光光子の裾野は斜め偏向となる。またその運動方向は、元の光子とは逆方向となる。従って、縦偏光光子の一部が透過するというよりも、むしろ縦偏光光子の一部が、偏光ビームスプリッタ内の電子に吸収され、新たに光子が放射されたと考えられる。 図8は、縦偏光光子が斜め偏光光子に変換されたときの波長を描いている。普通に考えると左側の図のように、光子の広がり面が折れ曲がって光子としての一体性を保つ。そのため、斜め偏光部の波長は、縦偏光部の波長よりも狭くなるように思われる。ところが実際は、右側の図のように、斜め偏光部の波長は、縦偏光部の波長と同じ長さを保つのである。その理由は、光子が波動だからである。ビームスプリッタを透過した光子の裾野の一部は、元の光子の進行方向とは逆方向に運動する。そのため、元の光子とは別の波動であると考えるべきである。有力な考え方は、「光子のエネルギーが、ビームスプリッタに吸収され、代わりにそのエネルギーを吸収したビームスプリッタ内の電子が、光子を放出する。」である。 ここで重要なのは、斜め偏光光子の波長幅は、水平方向に切り取ると、図8のXとなり広がることである。このXが光子の発見範囲となる。従って、縦偏光ビームスプリッタが45°に傾くと、光子の発見範囲は、√2 倍となる。 図9は、ビームスプリッタの傾きと縦偏光光子の透過の状況を表している。斜め偏光の波長を水平に切り取った長さが、光子の発見範囲であり、そのX分の1が光子の発見確率Uとなる。縦偏光光子は、右か左向へ運動する光子Aと左から方向へ運動する光子Bがあり、この2つの光子はエンタングルした状態にある。ビームスプリッタに入射する角度により、光子を見つける確率Uが変化する。 ・入射角が45°未満の鋭角で入射するときは、不透過となる。(光子Aではビームスプリッタの角度45°~90°、光子Bではビームスプリッタの角度-45°~-90°) ・入射角が45°以上の鈍角で入射するときは、透過する。(光子Aではビームスプリッタの角度45°~-90°、光子Bではビームスプリッタの角度-45°~90°) つまり、2つの光子は、 45°以上の鈍角では、 ・光子Aが透過すれば、光子Bも透過する。 ・光子Aが不透過であれば、光子Bも不透過である。 45°以下の鋭角では、 ・光子Aが透過する時、光子Bは不透過である。 ・光子Aが不透過の時、光子はB透過する。 と言う量子もつれ(エンタングル)状態となる。 光子がビームスプリッタに入射すると、光子の一部がスリットを透過し、一部が反射する。 図10は、ビームスプリッタに入射する光子とビームスプリッタの角度によって、光子のエネルギーが、透過と反射に分かれる割合を描いている。光子の広がり面とビームスプリッタの項さする角度θが45°未満のときに、透過エネルギーEtが反射エネルギーErを上回り、光子がビームスプリッタを透過することが分る。θが45°以上のときに、反射エネルギーErが透過エネルギーEtを上回り、光子はビームスプリッタを透過しないことが分る。θが丁度45°のときはどうなるかが問題である。図10は、双子の光子のうち、右から左方向に進む光子を描いている。θは同じ45°であるが、右図は、光子がビームスプリッタに対して鋭角で入射しているのに対して、左図は、鈍角で入射している違いがある。光子の運動エネルギーの方向から考えて、鈍角の場合は透過すると考えるのが自然である。一方、図に描いていないが、双子の光子のうちのもう片方は、左から右方向に進んでいるので、逆の結果となる。即ち双子の光子の内一方が透過すれば、もう一方は不透過となる。 しかし、この2つの光子の量子もつれは、測定して初めて結果が分かるのではなく、光子発生時点で予定され得るのである。 図8のXが、隠れた変数である。これをCHSH不等式に当てはめると次式となる。 これは、エンタングルした双子の光子対が示す相関性は、量子力学で主張される量子論的効果、つまり観測の結果初めて事象が決定されたのではなく、因果律により予測され得る結果であることを表す。 5 結論 ボーアらによるコペンハーゲン解釈とアインシュタインらとの間で戦わされたEPRパラドックスの議論は、アスペによってベルの不等式が破れることが予言され、1970年代から行われた実験によりEPR相関の現実性が確認された。そしてこの結果、アインシュタインらが主張した「局所的な隠れた変数の理論」は破れたのであった。しかし、エネルギー体理論の素粒子模型と光子模型による隠れた変数Xの発見により、EPRの相関性は、予測され得るものであることが明らかとなった。その変数Xは、垂直偏光の光子が斜め偏光のビームスプリッタを透過する時、光子を発見する範囲として捉えた波長λが、斜めに傾くことにより、広がった水平成分である。つまり、ベルの不等式の破れは、光子の発見しやすさの範囲が広がったことによるものである。これを想定できなかったベルの不等式が不完全なのではなく、現在の物理学の光子に対する理解が不完全なのである。そしてエネルギー体理論の光子模型が正しいことがここでも裏付けられた。「観測するまで分からない、観測して初めて現象が決定される。」と主張する量子力学のコペンハーゲン解釈は、不完全であることが再提起されたのである。
by TheoryforEvery
| 2022-05-09 22:52
| ☆とりまとめ途中記事から
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